2014年01月13日

冬の新刊サンプルなど

冬コミ&大阪では有難うございました!
薄桜鬼のほか、艦これやFateのお話をいっぱいさせていただいて楽しかったです。

次の参加はラブコレになります。
SSL土千本と目隠し鬼の続きを予定しています。

以下、冬コミ・大阪の新刊サンプルです。18禁注意。
冬の新刊【艶花湯煙恋語】は残部数冊ですが、小部数再版する予定です。


【艶花湯煙恋語】


「誰だ─!?」
 鋭く誰何する声。その張り詰めた緊張感とは裏腹に、あまりにも良く聞き慣れた声色だったことに安堵して、ふっと全身から力が抜ける。
「ひ、土方さん……っ」
「千鶴─か?」
 開け放たれた入り口から湯気が逃げていき、蟠った靄が晴れると、そこには目を丸くした土方の姿があった。
 ─言うまでもなく、裸である。
 前を手拭いで隠していたのは有り難い限りだ。もし全開で仁王立ちされていたら、その場で卒倒していたかも知れない。とは言え、以前彼の着替えに遭遇してしまった時とは違い、今回はこちらも一糸まとわぬ裸身なのだ。混乱と羞恥と居たたまれなさとで、もはや何をどうしていいかも分からない。─普通に考えれば、土方の言いつけを守った千鶴には非など一つも無い筈だが。
「……あ、うう……」
 真っ赤な顔をしたまま、ぶくぶくと湯に沈んだ千鶴を見て、土方はばつの悪そうな顔をした。視線を逸らし、がりがりと乱暴に頭をかき回す。
「あー……そうか。今はおまえが入ってる時間だったか。
 悪ぃ、ここんとこ徹夜続きだったもんでな。ちっとうっかりしてた」
「い、いえあの……わ、私もう上がりますから、どうぞごゆっくり……っ!」
 そのまま踵を返そうとする土方を、反射的に千鶴が引き止める。今にも湯から身を乗り出そうとした少女の姿を見て、珍しく土方が焦ったような声を出した。
「ば、馬鹿立つな、おまえ今の恰好わかってんのか─!?」
「え……?」
 恐慌状態のあまり思考のネジが飛んでいた千鶴は、一瞬今の状況を綺麗に失念していたのだ。湯から上がってしまえば、当然何も身につけていない少女の素肌が、土方の目の前に晒される訳で、張りついた手拭いは肝心の部分を隠すどころか、輪郭をあらわに浮かび上がらせる役目しか果たしておらず─
「きゃ─」
 絶叫は、慌てて駆け寄ってきた土方の手によって無理やり押さえつけられた。男の胸元に力ずくで抱き込まれ、ぎゅうぎゅうと締めつけられて呼吸を奪われる。
 肌と肌が触れ合い、お互いに裸身で絡み合うような体制だが、それに色気を感じるどころの騒ぎではない。千鶴は混乱極まってもはや涙目だし、土方は土方で千鶴の姿を他の隊士に見られるわけには行かないから、それこそ必死の形相である。男女の濡れ場とは程遠く、まるで手負いの獣の捕獲である。千鶴は、どうひいき目に見てもせいぜい野兎といった風情だろうが、例え兎一羽だろうと、追い込まれれば結構派手に暴れるものだ。

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【明け初めの】

◆原千

「声、出せ」
 すぐ耳元で聞こえる原田の声も、少し掠れている。普段は良く通る声色なのに、こういう時だけ濡れたような響きを混ぜるのは卑怯だと思う。
 ─逆らえなく、なる。
「んっ……あ、……先生、」
 胸元で蠢く頭を押さえると、彼女の細い指の合間で、くしゃり、と赤い髪がかき乱された。子供じみた千鶴のしぐさに、原田は少し笑ったようで、伏せられた顔の下からこそばゆい息が漏れる。
「……あ、ふぁ……っ、ん……っ!」
 ささやかな胸を執拗に舌と唇とで責めながら、男の指先はじわじわと下へ降りていく。スカートを脱がされ、下着の縁に手をかけられたところで、彼女ははっと息を飲んだ。
「嫌、です……っ、」
「千鶴?」
 下着を引き下ろそうとする原田の手を、必死で止める。不審げに彼がこちらを窺うのが分かったが、ぶんぶんとかぶりを振って、拒絶の意志を示した。
「……外、明るいから……見えちゃ、や……です、」
 まだ時刻は午後の始めだ。薄手のカーテンは引いているものの、冬ならではの凛と澄み渡った晴天のお蔭で、室内は隠しようもなく真昼の明度である。
 今までは、ライトを最小限に落とした夜の部屋で行うのが当たり前だったから、こんなに明るいところで肌を見られた事は無い。まして、そんなところを原田の前にさらけ出すなど─考えただけで、恥ずかしさに卒倒してしまいそうだ。
 涙目で切々と訴える千鶴に対して、にやりと笑った原田が返した答えはとんでもないものだった。
「いいじゃねえか。
 いつも同じシチュエーションじゃ物足りねえし、こういうのも今のうちに慣れとかねえと」


◆土千
 今日は成人式だった。
 かつては十五日に行われていた儀式も、日付が流動的になると共に、やや形骸化してきた向きはあるが、それでもひとつの節目として認識はされているのだろう。街並みには、着飾った若者たちの群れが溢れている。
 土方が付き合っている少女─もう少女と呼べる年では無くなるのだろうが─も、今年成人式を迎えていた。
 土方の勤める学園に、彼女がたった一人の女子学生として入学してきてから数年が経つ。二人の交際には、教師と生徒であるという前提から様々な制約が付きまとったが、どうにかそれらを乗り越えて、千鶴が無事学園を卒業したのが二年前。今は正式に婚約をして、千鶴の成人を期に、共に暮らすことも検討している。
(しっかし、すげえ人数だな……こりゃ)
 成人式に出席した後は、二人で過ごす予定だった。千鶴から迎えをお願いするメールが届き、会場に足を運んだ土方は、周囲を埋めつくすスーツと振り袖の群れに酔いそうになる。大量の新成人がひしめく光景を見ていると、日本の少子化問題が嘘のように思えるほどだ。
(千鶴は─)
 土方は自他共に認める美貌の持ち主だ。下手にうろついていると、振る舞われたアルコールの所為もあって浮かれた娘たちに捕まりかねない。実際、先程から何度も声をかけられたり、袖を掴まれたりで鬱陶しいことこの上無かった。その中には、肩から鎖骨を丸出しにした着物を着ている女性たちも居て、思わず眉間に皺が寄る。ひとつの着こなしと強弁されればそうなのかも知れないが、少なくとも土方の好みではまったく無い。
 やがて、人の群れの向こうに探していた姿を見つけて、彼はほっと息をついた。だがそれも束の間、眉の間に寄せられた皺は、千鶴の周囲を見回すに至って、ますます深くなってしまう。
 彼女は、控えめな桜色の着物を纏っていた。派手でもきらびやかでも無く、まして肩やら足やらを見せるように妙な改造もしていない、昔ながらの振り袖だ。つやつやとした黒髪は綺麗に結い上げられ、愛らしい面差しにはうっすらと化粧が乗っていて、千鶴の整った造形を引き立てている。メイクと結い髪はプロの手によるものだろう、彼女の慎ましやかな雰囲気を壊さないよう、どこまでも上品に仕上げられていた。
(……千鶴)
 見慣れている筈の土方でさえ、一瞬息を飲むほど綺麗な装い。もともと可愛い娘であると知ってはいたが、今の千鶴は、少女の清廉さと、大人の色香を共に纏って、ひときわ辺りの男の目を引きつけている。華やかな今風のアレンジ着物を着た女性が多い分、どこか古風で品格のある千鶴の佇まいが、却って目立つ事になったのだろう。─最も、千鶴本人は、そんな男たちの視線など気づいてもいないだろうが。
posted by 相模陸 at 20:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 更新情報◆恋華草
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